香港風ボルシチ

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 香港の餐庁(洋食レストラン)で定食を注文すると、必ず、スープは何にするか?と聞かれます。店によっては、「紅定白?(赤、それとも白?)」と聞いてくるので、最初は何のことかと思いましたが、「ボルシチ(紅湯=羅宋湯)とクリームスープ(白湯=忌廉湯)、どちらにしますか?」と聞いているのですね。クリームスープはコーンだったりマッシュルームだったりしますが、ボルシチは常にボルシチで、そして、どの餐庁にも必ずボルシチが用意されています。

 ロシアの料理が、なぜイギリスの植民地だった香港でこんなに普及しているのか、羅宋湯を食べるたびに不思議に思っていました。 調べてみると、20世紀初頭、ロシア革命で上海へ亡命した白系ロシア人が作ったボルシチが上海で広まり、その後、文革などで多くの中国人が上海から香港や台湾へ逃れたことで、華南地方にもボルシチが広まったのだとか。私の夫の父親が、まさにこの時代に香港へ移ってきた上海人なので、詳しい話を聞くことにしました。

 義父が言うには、 当時、確かに上海には亡命ロシア人がたくさんいて、ロシア料理の店もあった。貧しかった彼らは「羅宋××」(羅宋は上海語で「ロシア」の意味)という蔑称で呼ばれていた。また、当時の上海には山東人も多く、彼らは主に、軍隊や警察、料理の仕事に従事しており、ロシア料理店で働く人も少なくなかった。もともと山東人の中には、ロシアとの国境近くへ出稼ぎに行き、ロシア料理を習得していた人もいたようだ。上海から香港へ逃げた人々の中には山東人もいた。彼らが、香港でボルシチを広めたのではないか、 ということでした。  

 実際、香港の「皇后飯店」「車厘哥夫餐庁」「雄鶏飯店」など、ロシア料理が評判になった有名レストランのオーナーは全員山東人だそうです。香港の洋食文化は、入植したイギリス人がもたらしたものと、上海経由で入ってきたロシア料理の2つが混ざり合ってできたのですね。白と赤のスープは、まさにその象徴でもあるわけです。 もともとボルシチはウクライナの伝統料理で、やがてロシアや東欧諸国に広まりました。ボルシチにはビーツが欠かせませんが、上海ではビーツが入手困難だったためにトマトで代用した、と言われています。今も皇后飯店のボルシチは、トマトベースでありながら、ビーツもちゃんと入っています。

 ビーツ(紅菜頭=ホンチョイタウ)は鮮やかな赤紫色の甘い根菜です。現在の香港では簡単に手に入る野菜のひとつで、街市(市場)では生のものが、スーパーでは水煮の缶詰が売られています。

 今回のレシピは、そんな香港風ボルシチ。牛骨からダシをとりましたが、ビーフ味のコンソメキューブで風味を補っても構いません。

 香港風ボルシチは、「酸・甜・辣(酸っぱくて、甘くて、ピリッと辛い)」が基本。レストランで一緒に出される甘いパン(餐包=ツァンバーウ)と相性がよく、香港人にとっては、幼い頃から食べ慣れた懐かしの洋食の味です。(2014.6.14掲載)

<羅宋湯 香港風ボルシチ>

材料(4人分):

牛赤身肉(一口大に切ったもの) 200g
牛骨 450g
水 2リットル 
ベイリーフ 1枚
ニンジン(1センチ角の拍子切り) 80g
キャベツ(ざく切り。芯は細く切る) 250g
タマネギ(くし切り) 80g
セロリ(ななめ切り) 80g
トマト(くし切り) 小3個(250g)
赤トウガラシ(種をとったもの) 1本
ビーツ(水煮缶詰) 1缶(425g)
トマトペースト 大さじ3
塩 小さじ1
砂糖 大さじ2
レモン汁 大さじ2
こしょう、塩 少々

作り方:

1.鍋に湯(分量外)を沸かし、牛肉と牛骨を入れ、アクが浮いたら火から下し、流水で牛肉と牛骨を洗う。
2.再び鍋に水を入れ火にかけ、沸騰したら、牛肉、牛骨、ベイリーフ、ニンジン、キャベツの芯を入れ、ふたをして弱めの中火で2時間煮る。
3.牛骨を取り出し、残りの野菜とビーツの缶詰を汁ごと入れ、トマトペースト、塩、砂糖、レモン汁も加えて、さらに弱火で1時間煮る。
4.こしょうと塩で味を整えたら、できあがり。一晩おいて翌日煮返すと、さらにまろやかな味になる。

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