牛バラ肉とトマトのスープ煮

Categories 香港味探検
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 最近、牛バラ肉が気になります。

 うちの近所に牛バラ肉麺の専門店ができました。驚いたのは、注文すると、店の人に「どのバラ肉にする?」と聞かれること。普通のバラ肉(牛腩/アウラーム)の他に、牛坑腩(アウハンラーム)、爽腩(ソンラーム)、崩砂腩(バンサーラーム)が選べる、と言われましたが、何がどう違うのか、口で説明されただけではわかりません。

 その後何度も足を運び、実際に食べ比べ、資料も読んで知ったことは、牛腩は牛の腹の肉の総称で、肋骨に近い部分を牛坑腩と言い、肉の味が濃く、脂肪やゼラチン質も多いことから、柔らかくて、バラ肉の中でも上等な部位だということ。爽腩は、牛坑腩の中でも横隔膜に近い部分で、ゼラチン質が多く、文字通り「爽(さっくりとした)」歯ごたえが楽しめること。そして崩砂腩は爽腩のさらにごく一部、薄い筋肉質の膜がついた部位で、肉質は柔らかく、一頭の牛からごく僅か採れない貴重な肉だということ。一口に牛バラ肉と言っても、実に奥が深いのですね。

 さて、香港の牛バラ肉麺といえば、長年、柱侯醤という甘辛いタレで煮た肉を乗せたものが主流でしたが、最近、「清湯」という塩味のスープ麺が増えてきました。そして、冒頭にあげた牛バラ肉麺店では、その塩味スープに生のトマトを煮たものが入った牛肉麺があり、それがまた、やみつきになるおいしさなのです。

 缶詰のトマトペーストを使ったトマトスープ麺は時々見かけますが、生のトマトというのは珍しいのではないでしょうか。生特有の青臭さや酸味が、バラ肉の脂っこさを消して、とてもさっぱりと食べられます。また、トマトに含まれるグルタミン酸が肉のダシと相まって、スープにはうまみがたっぷり。このレシピを考案した人のセンスは素晴らしい、といつも感心してしまいます。

 店ではスープ麺ですが、私はご飯のおかずとして食べたかったので、少しアレンジしたのが今回のレシピです。

 牛肉の臭いを消すために、ショウガとベイリーフ(月桂樹の葉)を入れます。トマトの風味を生かしたいので香辛料は控えめにしましたが、逆に、八角(スターアニス)、白胡椒、セロリなどを足して、思い切り香り高くするのもいいかもしれません。清湯スープにつきもののダイコンは、トマトの邪魔をしないようニンジンに変更。根菜から出る甘みが牛肉スープのかくし味です。そして、トマトは、たっぷりと使うのがポイントです。

 肉は街市(市場)でなくても、店内で肉を解体してパック詰めしているローカルのスーパーなら、運がよければ牛坑腩や爽腩に出会えます(お値段は普通の牛腩の倍以上します)。見つけた時に購入して冷凍庫に保存し、ある程度たまったところで、まとめて煮るといいでしょう。かかる手間は同じなので、多めに作って、余った肉は冷凍保存しておけば、カレーや煮物など用途はいくらでもありますし、スープも同様です。肉の部位にこだわらず、常に売られている牛筋腩(アウガンラーム/牛スジつきバラ肉)でも、もちろんおいしくできます。

 牛バラ肉とトマトだけでも充分白飯に合う味ですが、辣椒醤(ラッジウジョーン/チリソース)を少量つけると、ますますご飯が進む味になるので、ぜひ試してみてください。(2013.4.20掲載)

<番茄清湯牛腩 牛バラ肉とトマトのスープ煮>

材料(作りやすい量):

牛バラ肉(好みの部位) 1キロ
ニンジン(乱切り) 2本
ショウガ(薄切り) 10g
ベイリーフ 1枚
水 約2リットル(かぶる程度)
塩 大さじ1
トマト(二つ割り) 小5個
長ネギ(小口切り) 少々

作り方:

1.深鍋に湯をたっぷり沸かし、牛バラ肉を入れて、10分間ゆでる。湯を捨て、牛バラ肉を流水でよく洗う。
2.深鍋に分量の水を入れ、牛バラ肉、ニンジン、ショウガ、ベイリーフを入れて強火にかけ、沸騰したら弱火にして、約2時間、牛肉が柔らかくなるまで煮る。
3.牛肉を取り出し、食べやすい大きさに切る。
4.別の鍋に2のスープを500cc程度とり、中火にかけ、沸騰したらトマトを入れ、少し煮くずれてきたら、塩を入れて味を整え、器に入れ、牛肉を乗せて、長ネギを散らして、できあがり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2 thoughts on “牛バラ肉とトマトのスープ煮

  1. 牛腩肉には、そんなに分類できる部位があるのですか。
    トマトと肉との相性は、そういうことなのですか。
    いろいろ教えて頂きました。

    お店で外食するときに、たとえば「牛腩麺」と「浄牛腩」だと、「浄牛腩」の方がうんと高価になりますよね。叉燒などもそうですが、1品料理に格上げされると、量だけでなく「牛腩(叉燒)のいろんな部位を入れてくれる」から代金も高くなる、、、という理由だったりするのでしょうか?それとも、単一の部位でも良い部分を使うから高価になるのかな?
    トマト入り麺を訪港中によく食べます。専門店も生まれたりして、ここ数年で増えて来た様な印象が?・・・日本でもサッポロ一番から、トマト味の袋麺&カップ麺が新発売になりました。

  2. Noriko on

    こえだ様

    コメントをありがとうございます。

    トッピング単体だと値段が高くなる件、私の経験で言うと、単に「量が多くなる」からではないでしょうか。
    たとえば、上記本文にある牛バラ麺屋には、「牛バラ肉カレーライス」と「牛バラ肉カレー」の2種類があり、カレーはカレーライスの倍額で、量は倍以上です。今日はご飯を作りたくない…なんて日は、とりあえず白飯だけ炊いて、カレーをテイクアウトすることもあります。家族3人で食べても余るくらいなので、カレーライスを3つ買って帰るよりお得なんです。

    上記の原稿を書くにあたって一番困ったのは、各バラ肉の部位に相当する日本語が見つからなかったことです。これらの部位が日本では何と呼ばれているのか、全くわかりませんでした。焼き肉で人気のハラミは横隔膜の一部分だそうですが、牛腩はとてもじゃないけれど、焼いて食べられる固さではありません。日本では「すじ肉」扱いで煮込み料理に使われるのでしょうか。逆に、香港ではハラミに相当する部分はどこに行ってしまうのかしら…?と疑問は尽きません。

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