春菜と塩漬けスペアリブと大豆のスープ煮

Categories 香港味探検
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 先日、久しぶりに潮州料理を食べに行きました。いつも思うのですが、潮州料理は日本人の口に本当によく合います。味つけに漬け物や乾物から出るダシを上手く使っていて、それが、昆布やかつお節のダシ文化がある日本人の舌になじみやすいのかもしれません。

 今回、特に感動したのは、塩漬けした豚スペアリブと大豆のスープで煮た青菜の料理。白濁したスープは塩味なのに、なんともいえない複雑なうま味が感じられて、あとを引くおいしさです。

 塩漬けの豚肉=咸肉(ハームヨッ)は中国各地に存在します。日本でも「塩豚」の名称で、手作りする人が増えてきました。塩漬けの利点は、保存がきくだけでなく、肉から余分な水分が抜け、うまみが凝縮し、生肉とは異なる風味が生まれることです。普通は豚のバラか肩ロースのかたまり肉に塩をすり込んで作りますが、今回の料理で、骨付きの豚肉を塩漬けにしてもおいしいものだと知りました

 ひと口大にカットされた豚スペアリブを購入したら、たっぷりの粗塩をまぶし、ビニール袋に入れ、できるだけ空気を抜くようにしながら口を閉じて、冷蔵庫でひと晩置きます。翌日、肉から水分が出ているので、キッチンペーパーを使って丁寧に水気を吸い取ります(水分が腐敗の原因になるので)。水分が減った肉の赤身は鮮やかな赤色になり、全体に硬く引き締まった感じに。

 肉を新しいビニール袋に入れて、同様に密封し、再び冷蔵庫へ。保存状態がよければ一週間以上持ちますが、2日くらい寝かせただけでも、充分うまみが凝縮されています。

 一緒に煮込む大豆(黄豆/ウォンダウ)は、潮州料理ではおなじみの食材です。なぜ潮州では大豆をよく使うのか、実はずっと疑問に思っていたのですが、知り合いの潮州出身の香港人に尋ねても、明確な回答は得られませんでした。「昔から、当たり前のように大豆が入っていた。疑問に思ったことはない」と。潮州には「豆醤」という味噌としょうゆを合わせたような調味料もあり、とにかく潮州人が大豆好きであることは間違いなさそうです。 大豆はそのゆで汁も魅力的です。豆のほのかに甘い風味が溶けているので、これを捨ててしまう手はなく、そこに濃厚なダシの出る豚スペアリブを加えた煮込み料理は、潮州の代表的な家庭料理のひとつ。今回の料理は、そのスペアリブを塩漬け肉に変えた、というのがポイントで、うま味に奥行きが出たように思います。

 このおいしいダシで煮る青菜は、「春菜(チョンチョイ)」という潮州特産の野菜です。香港では聞き慣れない名前なので街市(市場)にもないのでは、と思っていたら、ローカルのスーパーの野菜売り場で見つけました。店員さんが「入荷は珍しい」と言っていたので、運がよかったようです。

 レストランで食べた時は調理されていたので「小松菜に似ているな」という印象だったのですが、実際の春菜は50センチ近くあり、茎は太く、ちりめん状の葉は掌サイズの大きさという堂々たる様子。味はほろ苦く、その名のように芽吹きの季節にふさわしい精の強さを感じさせる青菜で、これに代わる野菜はちょっと思い浮かびません。見つけたらぜひ味見していただきたい青菜です。

 もし春菜が手に入らなくても、スープ自体がうま味たっぷりなので、どんな青菜でも大丈夫。最後の一滴まで、大事に味わいたいと思えるひと皿です。(2013.5.18掲載)

<咸排骨春菜煲 春菜と塩漬けスペアリブと大豆のスープ煮>

材料(4人前): 

豚スペアリブ(一口大に切ったもの) 350g
粗塩 大さじ2
大豆 60g

春菜(20センチ程度に切る) 300g
水 1リットル

作り方:

1.豚スペアリブに粗塩をまぶし、ビニール袋に入れて空気を抜きながら口を閉め、冷蔵庫で一晩置く。
2.肉から出た水分をキッチンペーパーで拭き取り、再び、ビニール袋に入れて、冷蔵庫で保存する。

3.たっぷりの水に大豆を浸してひと晩置く。
4.鍋に湯を沸かし、2のスペアリブを入れて煮立て、沸騰してアクがでてきたら、湯を捨てる。
5.同じ鍋に分量の水を入れ、スペアリブ、水気を切った大豆を入れ、弱めの中火で一時間、大豆が柔らかくなるまでゆでる。
6.春菜を加え、柔らかくなるまで煮たら、火から下ろして、できあがり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2 thoughts on “春菜と塩漬けスペアリブと大豆のスープ煮

  1. 冒頭のお写真を拝見し、最初の4行を読んだところで既にお味が浮かびます。それが本文を経て、文末の「最後の一滴まで、大事に味わいたいと思えるひと皿」まで一気に読み進めると、もう、なんだか想像が広がってしまって。
    NORIKOさんの記事はいつもそうですが、香りや味が記事から滲み出てきます。空腹のときに拝見するのは危険です(笑)。もしも将来的に「写真だけでなく香りや味の出るPC」が開発されたら、引き込まれっぱなしでとんでもないことになりますね。
    出汁と塩漬け肉でこしらえられるだけに、素材の味も十分楽しめるわけでしょうか。・・・日本でもう少し中国野菜が手に入るといいのにな・・・と思います。

  2. Noriko on

    こえだ様

    コメントをありがとうございます。

    「たっぷりの油を使って、炎で一気に加熱する」というのが、日本人の中国料理に対する一般的なイメージだと思うんです。でも実際はそんな料理ばかりではない、ということを伝えるのが「香港味探検」のテーマのひとつで、そういう意味では、この料理は最適でした。

    地味だけど滋味あり、みたいな。

    春菜を小松菜に代えたら、日本の料理と言っても全然違和感ないですよね。
    塩豚はもちろん、大豆から出るダシが素晴らしくおいしくて、こういう発見はどんどん普段の料理に生かしていきたいなーと思っています。

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