ホタテと豆腐のトウチ蒸し

Categories 香港味探検
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 旧正月に家族や親しい仲間が集まって、新しい年の始まりを祝う食事会を「開年飯(ホイニンファーン)」と言います。レストランにはコースメニューもありますが、「開年飯」は必ずしも豪華な宴会である必要はなく、自宅で手料理やケータリングで済ませる人もいます。みんなで楽しくおいしいものを食べることに重点が置かれているので、おせちを前に粛々と祝う日本の正月よりも、ラフで自由な雰囲気です。

 我が家も毎年、年初一(元旦)に、夫の親族一同との「開年飯」に参加します。昨年はレストランで宴会用のコース料理を食べたのですが、今年は、アラカルトで注文することになりました。運ばれて来た料理は、「家常小菜」と呼ばれる家庭料理ばかり。風邪で体調が今ひとつだった私は、「今日は子豚の丸焼きはキツいなあ」と思っていたので、正直、助かりました。

 特においしかったのは、豆腐の上にホタテの貝柱を乗せて、豆豉(ダウシー)を散らして蒸した「豉汁帯子蒸豆腐」です。あっさりしていながらご飯が進む味で、優しく胃に収まってくれました。

 

 

 豆豉は、ふやかした黒豆に塩や麹を加え発酵・乾燥させたものです。中国料理における豆豉の歴史は古く、漢の時代からあったと言われています。最近では、日本でも「トウチ」の名で知られるようになりました。日本の浜納豆や大徳寺納豆によく似ているので、日本人の舌にもなじみやすかったのでしょう。塩辛い固形のしょうゆ、のような感覚で使えばいいのですが、そのまま入れるより、少量の油で炒めてから使うと風味がよくなるので、ひと手間かけることをお薦めします。

 下に敷く豆腐は好みのもので構いませんが、我が家でいろいろ試したところ、一番評判がよかったのが、実は、スーパーで売っているパック入りの充填豆腐。街市(市場)で売っている固い豆腐の方が大豆の味が濃いのですが、この料理に関しては、豆腐を汁ごとスプーンですくってご飯の上に乗せ、ご飯と一緒に食べるのがおいしいので、ふるふると柔らかい充填豆腐がぴったりなのです。言い換えれば、この料理は、安い充填豆腐のおいしい食べ方、なのかもしれません。

 仕上げにかける熱い油も大切です。日本人はつい油を敬遠しがちですが、ほんの少量加えるだけでうまみとコクが生まれ、劇的においしくなります。私にとって、この「油マジック」を知ったことが、香港で料理を学んだ一番の収穫になりました。もちろん、カロリーが気にならないわけではありません。そういう場合は、他のおかずの油を減らして、全体の油の量を調整しています。

 この料理は素材が淡白なので、油もクセのないものが合うと思いますが、料理によっては、ピーナッツ油やオリーブ油など、適材適所で使い分けられるようになるのが、私の目下の課題です。

 香ばしい豆豉、さわやかな薬味、ぷりっとした貝柱と滑らかな豆腐―ー家庭料理とはいえ、余計なものが一切なく、なんて洗練されている料理だろう、といつも感心してしまう一品です。(2010.2.19掲載)

 

<豉汁帯子蒸豆腐 ホタテと豆腐のトウチ蒸し>

材料(4人分):

豆腐(1.5センチ厚さに切る) 1丁(約400g)
ホタテの貝柱(横半分に切る) 5個(約80g)
ごま油 小さじ1
トウチ(粗みじん切り) 大さじ山盛り1
にんにく(みじん切り) 1粒
砂糖 小さじ1/3
油 大さじ1
しょうゆ 小さじ1
長ねぎ(小口切り) 少々
香菜(粗みじん切り) 少々

 

作り方:

1.小鍋を弱火にかけ、ごま油を熱し、 トウチとにんにくを炒め、いい香りがしてきたら取り出し、砂糖を加えてよく混ぜておく。
2.皿に豆腐と貝柱を並べ、上に1を乗せて、蒸気の上がった蒸し器で5分間蒸す。
3.豆腐から出た水分が多すぎたら少量捨て、熱く熱した油を上からかける。
4.さらにしょうゆをかけ、長ねぎと香菜を散らして、できあがり。

 

 

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