MARKS & SPENCER BAKERYの「チョコチップショートブレッド」

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 生まれて初めて行った海外は、20年ほど前の冬のロンドンでした。
ロンドンといえばパンク! 伝統と前衛がない交ぜになった都会のイメージがありましたが、実際に目にしたのは、地味で質素でこじんまりとした可愛らしい街でした。
ふらりと入ったデパートの洋服売り場は、同じ色・形の既製服が大量にかかっていて、デザインも野暮ったく、これにも戸惑いました。
でも、がっかりしたかというとそんなことはなく、むしろ、そのリアリティに胸が躍りました。実際に来て初めて知ることがある。旅とはそういうものだ、と。

 その後、香港に旅行に行って、MARKS & SPENCERに入った時、「わっ、ロンドンと同じだ。やっぱりここはイギリス領なんだ」と、妙に感心したのでした。香港人好みとは思えないデザインの服がずらずらっ、と…。

 1997年以前は、香港の街を歩いていても、中国語(マンダリン)を耳にすることはほとんどなく、あるとすれば、台湾からの旅行者とすれ違ったときぐらい。いろんなところにエリザベス女王の写真が飾ってあって、小さな薄暗い郵便局の壁に、優雅に微笑む女王の顔を見つけて、不思議な違和感を感じたのを、今でも覚えています。

 北京オリンピックの閉会式を家のテレビで観ていたら、最後に次の開催地ロンドンの紹介と共に、イギリスの国歌が流れてきました。すると隣りで観ていた夫が、「おっ、懐かしい」。
夫が学生だった頃、学校行事などで流れる国歌はイギリス国歌だったのです。「中国の国歌なんて聞いたことなかった」と。

 想像していたよりもずっと早く香港は中国化したなあ、と感じています。
九龍と深圳、広州を結ぶ高速鉄道建設のニュースを聞いて、
ランタオ島とマカオ、珠海を結ぶ大橋建設構想の展示パネルを見て、
香港大学に深圳キャンパスができるという新聞記事を読んで、
香港は、華南の一都市として、広東省の中に吸収されていくのだなあ、と思いました。

 もちろん、中国の力を得て、香港がどんどん発展するのは、香港にとっていいこと。年々、香港人はマナーがよくなり、愛想もよくなり、サービスもよくなり、便利になり、清潔になり、若い人たちもおしゃれになって、ずいぶんいい感じに落ち着いてきた、と思っているのに、昔の香港を懐かしく思い出すなんて、私ったら、どうしちゃったのでしょう。

 昔、バンドをやっている香港の若い子たちが、「聴くのはやっぱりUKロック。俺ら、イギリス人なわけだし」と言うのを聞いてびっくりしたけれど、そんなむちゃくちゃ言う香港を、面白いと思っていました。

 イギリスのような中国のような、でもそのどちらでもない香港が結構好きでした。中国初のノーベル賞受賞だって、あの頃の香港だったら、お祭り騒ぎだったでしょうに。

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 つい先日、何年かぶりに、MARKS & SPENCERに足を踏み入れた途端、なぜだか、これらのことが一気に頭の中に、ぶわわわわ~っと押し寄せて来て、自分でもびっくりしました。たぶん、香港に残っている、数少ないイギリスの匂いがしたからでしょう。懐かしくて、泣きそうになりました。

 沙田(シャーティン)のMARKS & SPENCERの店の奥には、ベーカリーがあって、パンやクッキーを焼いて、売っています。

 チョコチップが入ったショートブレッドを買いました。

 ショートブレッドとは、イギリスを代表するお菓子の1つで、小麦粉、砂糖、バター、塩でできた焼き菓子です。「サクサクしたバタークッキー」の意味だそうです。確かに見た目は分厚いクッキーで、かじると、しっとり、ホロホロしています。

 このショートブレッドは、大きく砕いたミルクチョコレートがたくさん入っていて、そのチョコの味が、日本のチョコとは風味が違うのも、イギリスっぽい感じ。ボリュームがあるので、一切れでお腹いっぱい。これは絶対に、砂糖を入れないイギリス式のミルクティーと一緒に食べたい味です。

 MARKS & SPENCERのお菓子売り場には、他にも、紅茶によく合うクッキー類がたくさんあります。パッケージもすごく可愛い。

 イギリスが恋しくなったら、また来よう。


もしもMARKS & SPENCERが香港から撤退したら、私、本当に泣くだろうな…。


朱古力砕粒牛油香脆餅(10ドル)

MARKS & SPENCER 沙田正街2-8號新城市廣場1期4樓428及438舖

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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