香港式フレンチトースト

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 香港に引っ越してきて間もなくの朝。

 仮住まいのサービスアパートメントの近くにあった茶餐庁に入り、メニューの中に見つけた「French toast」の文字。「さすがは香港、欧風だ」と感心して注文したら、店のおじさんに「オマエ、朝からこれを食べるのか?!」と真顔で驚かれ、何がいけないのかわからない私も目をぱちくり……というのが、私と西多士(サイドーシー)との初めての出会い。

 もちろん今ではよくわかります。

 西多士の正式名称は「法蘭西多士」。しかし香港版フレンチトーストは、本場のものとは似ても似つかぬ、揚げパンというかパンのてんぷらのようなもので、いくら胃袋がタフな香港人でも朝っぱらからは食べません。3時のおやつ、すなわち下午茶(アフタヌーンティー)で食するのが香港の常識です。

 西多士は、5、60年代の冰室(ビンサッ/茶餐庁の前身で、茶餐庁よりさらに簡素な軽食店)時代から現在まで延々と食べ続けられている人気メニューです。

 食パンに溶き卵を付けて油で揚げ焼きし、バターとシロップをかけただけのものですが、卵をかりっと揚げる店、ふんわりと揚げる店、少なめの油で焼く店…といろいろで、パンの間にピーナッツバターやジャムを挟んだものもあり、店ごとに異なるので、一時期、ずいぶんハマって食べ比べてみました。

 以前、赤柱(スタンレー)の屋台で食べた西多士は、注文を受けると、店のおじいさんが、まず卵の白身だけを皿に取り、フォークを使って丁寧に泡立てから黄身を混ぜ、パンに浸して油で揚げていました。昔からある古い冰室や茶餐庁の方が、こだわりをもって西多士を作っているような気がします。そして、その時食べた西多士の間に挟んであったのが、咖央(ガーヨン)。

 これは「KAYA」という、マレーシアやシンガポール産のカスタードクリームで、ココナッツミルクと卵と砂糖を煮詰めて作ったものです。普通は黄色ですが、パンダンという香草で風味づけした緑色のものもあります。香港では「咖央」あるいは「咖吔(ガーヤン)」という名で知られていて、子供の頃トーストに塗って食べた人も多いのだとか。しかし最近はジャムやピーナッツバターに押され、スーパーでもあまり見かけなくなりました。

 咖央入りの西多士も、今では、何軒かの老舗の茶餐庁でしか食べられなくなりましたが、その懐かしい味を求めてわざわざ足を運ぶ香港人も多いのだそうです。

 ともあれ、西多士は今日も人気者。茶餐庁に入ると、本当にたくさんの人が西多士を食べているのでびっくりします。日本人にはかなりヘビーなおやつですが、パワフルな香港人にはエネルギー補給に丁度いいのかもしれません。普段、油っこいものや甘いものを敬遠している香港人の我が夫でさえも「時々、無性に食べたくなる」と言うのですから、西多士には、香港人の心を捕らえて離さない何かがあるのでしょう。

 西多士は香港人のソウルフードかも…と思う今日この頃です。(2007.6)

<咖央西多士 香港式フレンチトースト>

材料(1人前):
サンドイッチ用食パン 2枚
咖央 大さじ2
卵 2個
バター 1片
パンケーキ用シロップ 少々
油 大さじ5

作り方:
1.食パンに咖央を塗り、もう1枚を重ねてサンドイッチにする。
2.溶き卵を作り、食パンを浸す。
3.油を熱したフライパンで、2の食パンをきつね色になるまで揚げ焼きする。
4.皿に盛って、バターを乗せ、シロップをかけて、できあがり。

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